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コラム


▼ 誰にも聞けない夜のこと…人気ライターの連載コラム

[椎名こゆり]桃色のしずく

第9話 景色(後編)

あたしは焦った。

どうしよう、
どうしたらいい、

いろんなことが一度にアタマの中を駆け巡って、そして、どうすることもできないでいるうちに、 えりかさんはあたしのいるベランダを見上げ、

そして、目が合った。

「待って!」

あたしは叫んでいた。

えりかさんがくるりと向きを変えて、戻ろうとしたから。

どうしていいか最高にわからない状態の中でも、引きとめなければ、と思った。

行ってしまったらもう二度と、あたしにも高森さんにも姿を見せてくれないんじゃないか…。

「待って、おねがい、待って」

止まってくれた。

急がなきゃ。

部屋に戻ってあたしは服を拾い上げ、もうこれ以上は無理という超高速でそれを着た。

Tシャツは投げた。
ブラを着けるのももどかしい。
ストッキングはいらない。

さっきの紙切れを入れたバッグをひっつかむ、ああ、もうどうしてこんなときにあたしはブーツなんだろう。
こんなもん履いてられない。

ブーツを手に走り出した。

ドアがバタンといって閉まったかもしれないけどそんなことは知ったことじゃない。

はだしで外に出たのなんて、何年ぶりだろう。

やっぱり足の裏が痛い。

えりかさんはそこにいた。あたしを見て、自転車を停めてこっちに来る。

涙と鼻水がこぼれてくる。

「リオちゃん!なんで靴……」

遮ってあたしは叫んだ。

「ごめんなさい、えりかさん、本当に、あたし、ごめんなさい、ごめんなさい」

息を切らしてただそうくり返すあたしに、

「ちゃんと靴履きなさい、どうするの、ケガしたら、もう……」

そう言ってえりかさんはあたしの肩を両手で包んだ。目尻にうっすらと涙が浮かんでいた。

あたしは両手でバッグとブーツを握りしめ、声をあげて泣いた。

これも、何年ぶりのことだろう。

ただただ、自分はなんて弱くてバカなんだろうと思った。

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ライター紹介

椎名こゆり(しいなこゆり)

椎名こゆり(しいなこゆり)

現役風俗嬢。
小説・エッセイをweb上やスポーツ新聞などで発表している現役風俗嬢。深い洞察眼から生まれる繊細な表現にファンも多い。

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