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コラム


▼ 誰にも聞けない夜のこと…人気ライターの連載コラム

[椎名こゆり]桃色のしずく

第10話 街路樹(後編)

「あのね、あたしが、誘ったみたいなものなんだよ、高森さんは、わるくないんだよ」

たまらなくなってそう言ったけど、なんだかみっともなく響いた。

「そんなふうに、言わなくっていいのに」

静かにえりかさんは言った。

「だって、リオちゃん、ずっと……好きだったでしょう?あいつのこと、最初から」

「えっ」

「ごめんね、だいたい聞いたの。

どこで知り合って、とか……あいつに」

「あ……そうなんだ」

気が遠くなった。

何も知らなかったのはあたしだけだったんだ。

「ごめんね、嫌だよね、その、ヘルスとかそういう風俗とか、でもね昨日はお金もらってとかじゃないから……あっ」

余計なことを言ってしまった。

お金というつながりの方がまだまし、なのかもしれないのに。

あたしは焦った。頭がいっぱいだ。

「ごめんなさい、つい、ほら、なにしろ風俗嬢だとさ、どうしてもお金のことを真っ先に言っちゃってね、うん、あはは、ごめんなさい」

「そんな言い方しなくていいの、だめだよ、どうしてリオちゃんがあやまるの」

もはやあたしには、卑屈になるくらいしか道がなかった。

えりかさんの冷静さと、優しさと、その怖さから逃れるためには。

街路樹も建物も空の色も、みんなあたしに「どうしたっておまえが負けだよ」と冷ややかな視線を浴びせているみたいに感じる。

耐えられなくなり、あたしは言った。

言っていいのかわからなかったけれど、口から言葉が出てしまった。

「ねえなんで怒らないの?
なんで平気なの?
あたしひどいことしたじゃん!
すっごいひどいことしたじゃん、怒ればいいのに、もっと、キレればいいのに、ねえなんで」

「平気なわけないでしょっ」

遮るように強くえりかさんが言った。

あたしは身構えた。ひっぱたかれるかもしれない、でもそれでも仕方ない、と一瞬で覚悟した。

でも、そうはならなかった。

「平気なわけじゃないのよ……。

ただ……」

そのときあたしのケータイが鳴った。

高森さんからだった。

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ライター紹介

椎名こゆり(しいなこゆり)

椎名こゆり(しいなこゆり)

現役風俗嬢。
小説・エッセイをweb上やスポーツ新聞などで発表している現役風俗嬢。深い洞察眼から生まれる繊細な表現にファンも多い。

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